労働生産性の向上に寄与する健康増進手法の開発に関する研究

研究代表者から

本研究では,(1)労働生産性の多面的測定手法の確立,(2)労働生産性の向上に寄与する健康増進手法について主要な職種・業種ごとのガイドラインの開発,(3)ガイドラインで提示された介入手法の有効性の科学的検証,(4)これらの手法の具体的な手順を示すマニュアルの開発,を目的とします。本研究では,生活への支障が大きい健康問題であるメンタルヘルスと腰痛に注目します。
わが国では,メンタルヘルスの第一次予防対策について,職場環境改善,管理監督者教育,セルフケア教育のガイドラインが作成されています。しかし,ガイドラインの推奨内容はメンタルヘルス不調の未然防止策に限定され,労働生産性の向上にも寄与する方策は取り上げられていません。腰痛に関しては「心理社会的ストレスが強く影響する」「安静よりも運動が有益」など従来とは異なる事実が明らかになるなど,その概念は転換期を迎えています。
本研究では,労働生産性について,多面的な測定手法を検討します(平成28-30年度)。心理社会的要因の測定に加えて,生体工学的,経済学的視点にも注目した測定手法を提案する点,経営学視点から重要業績評価指標(KPI)の概念を導入し,職種や業種に応じた労働生産性の指標を提案する点が独創的です。これらの工夫により「労働者-職場-企業」にまたがる各水準の生産性を幅広く把握することが可能になります。
メンタルヘルスに関しては,労働生産性の向上に寄与する健康増進手法を検討し(平成28年度),モデル事業を通じて有効性を検証後(平成29-30年度),マニュアルを完成させる(平成30年度)。メンタルヘルスと生産性の双方に寄与する鍵概念として,世界的に科学的検証が進んでいるワーク・エンゲイジメントに注目する点も独創的です。
腰痛に関しては,痛みの原因となる異常や疾患の特定ができない非特異的腰痛に注目した介入手法を検討し(平成28年度),モデル事業を通じて有効性を検証後(平成29-30年度),マニュアルを完成させます。本研究では,人間工学的要因に加えて心理社会的ストレスに注目した介入手法を検討することがユニークです。
最終年度(平成30年度)には,労働生産性に関する多面的な測定指標,生産性向上の寄与する健康増進手法について主要な職種・業種ごとのガイドライン,その具体的な手順を示すマニュアルの3つを成果物として提示します。

島津 明人(しまず あきひと)
北里大学人間科学研究センター 教授

研究計画

本研究の目的は,(1)労働生産性について多面的な測定手法を確立すること,(2)生産性の向上と健康の増進の双方に寄与する介入手法について,主要な職種・業種ごとのガイドラインを開発すること,(3)ガイドラインで提示された介入手法の有効性を科学的に検証すること,(4)これらの手法の具体的な手順を示すマニュアルを開発することです。本研究では,生活への支障が大きい健康問題であるメンタルヘルスと腰痛に注目します。
これらの目的のために,(1)文献レビュー,専門家等への意見聴取,データ収集と解析を行い,労働生産性の測定に関して,心理社会的指標,生体工学的指標,経営学的指標,経済学的指標の視点から検討を行います。また,(2)文献レビューとデータ解析を通じて,メンタルヘルス・腰痛・生産性のそれぞれと関連のある職場要因と個人要因を主要な職種・業種ごとに検討するとともに,産業保健スタッフ等への意見聴取を通じて,対策におけるニーズと課題を検討します。得られた結果に基づき,効果的な対策手法に関するガイドライン(案)を主要な職種・業種ごとに作成します。さらに,(3)文献レビュー,好事例の収集,ガイドライン(案)で提案された内容を考慮しながら,生産性の向上に寄与する健康増進手法を開発してマニュアル(案)を作成します。(4)モデル事業によりガイドライン(案)とマニュアル(案)で提示された介入手法の有効性を検証し,ガイドラインとマニュアルを完成させます。
本研究により,労働生産性の観点を踏まえた効果的かつ包括的な健康増進を推進することができ,社会全体の活性化につながることが期待されます。

研究者紹介

島津 明人(北里大学一般教育部人間科学教育センター・教授)
西 大輔(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部システム開発研究室・室長)
荒川 豊(奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科ユビキタスコンピューティングシステム・准教授)
黒田 祥子(早稲田大学教育・総合科学学術院・教授)
松平 浩(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座・特任教授)
中田 光紀(産業医科大学産業保健学部産業・地域看護学・教授)
梶木 繁之(産業医科大学産業生態科学研究所産業保健経営学研究室・非常勤講師)

研究成果

平成29(2017)年度総括・分担研究報告書

平成28(2016)年度総括・分担研究報告書