2021年度

ソーシャルメディアを活用した自殺対策に関する研究 > 2021年度

研究計画

本研究の目的は,スマートフォンのアプリケーションにより取得した継時的データを用いて,大学生のソーシャルメディア利用がメンタルヘルスに及ぼす影響と,そのメカニズムおよび個人差を明らかにすることです。
ソーシャルメディアがメンタルヘルスに及ぼす影響は,いつ,どのような人が,どのメディアを,どのように使い(メディアの種類,利用時間・頻度),いかなる経験をしているか,により異なる可能性があります。
本研究では,①ソーシャルメディアの利用状況に関するログデータ,②日中およびソーシャルメディア利用時の感情・気分に関するデータを継時的に取得するスマートフォン用のアプリケーションを開発します。そして,利用者のメンタルヘルスや個人要因,環境要因の情報を合わせて分析し,ソーシャルメディアによるメンタルヘルスへの影響を実証的に明らかにします。これにより,ソーシャルメディアによる悪影響を受けやすい個人の早期発見と個人の特徴に応じたメディアの適切な利用方法の提案が可能になると考えています。
プロジェクトはⅠアプリケーション開発・Ⅱ予備調査・Ⅲ実証研究(観察研究・インタビュー調査)の3つのフェーズに分けて実施します(図Ⅲ)。
Ⅰアプリケーション開発のフェーズでは,メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性があるソーシャルメディア使用について,データを収集できるスマートフォンアプリケーションを開発します。具体的には,ソーシャルメディア(LINE,Twitter,Instagram,Facebook,Facebook Messenger,Tik Tokの6種)それぞれの(a)使用開始時刻および(b)使用時間と(c)Android OSの行動認識センサが出力するデータ(静止している,歩いている,走っている,自動車車内,自転車に乗っている,傾いた,検出不可能)を収集します。(ログデータには投稿内容および閲覧内容は含みません。)
Ⅱ予備調査のフェーズでは, 大学生400名を対象として,OS(Android,iOS)の違いによる利用者の社会心理学的特徴についての探索的なWeb調査を,実施します(2021年9-10月)。
Ⅲ実証研究のフェーズでは,大学生200名を対象として,アプリケーションを用いて縦断的データを収集します。まず,ベースライン調査として,観察期間の前後にWeb調査によりメンタルヘルス・個人・環境要因のデータを収集します。その上で,アプリケーションによりソーシャルメディアの利用状況に関するログデータと,気分・感情に関するデータを2週間にわたり収集します(2021年11-12月予定)。そして,調査参加者のうちメンタルヘルスの変動やソーシャルメディアの使い方が特徴的な10名程度に対してインタビュー調査を実施します(2021年12月-2022年3月予定)。
並行して,ソーシャルメディア使用とメンタルヘルスについての理解を深めるために,専門家による講義を開催することを予定しています。

図 3 プロジェクトの全体像(2021年度)

本研究は一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターからの委託による、令和3年度革新的自殺研究推進プログラム「ソーシャルメディア を活用した自殺対策に関する研究」(研究代表者:島津明人)の一環として実施します。

研究者紹介

研究代表者 島津 明人(慶應義塾大学 総合政策学部・教授)
研究分担者 濱田 庸子(慶應義塾大学 環境情報学部・教授)
研究分担者 森 さち子(慶應義塾大学 総合政策学部・教授)
研究分担者 大越 匡 (慶應義塾大学 環境情報学部・准教授)
研究分担者 中澤 仁 (慶應義塾大学 環境情報学部・教授)
研究分担者 岡田 暁宜 (慶應義塾大学 環境情報学部・教授)
研究分担者 伴 英美子(慶應義塾大学 政策・メディア研究科・特任講師(非常勤))
研究分担者 時田 征人(慶應義塾大学 SFC研究所・上席所員)