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〒252-0373 相模原市南区北里1-15-1

北里大学人間科学教育センター

研究計画RESEARCH PROJECT

研究概要

私たちの行っている TWIN study IおよびTWIN study II、TWIN Study IIIそれぞれの特徴をご紹介します。TWIN Studyは"Tokyo Work-life INterface Study"の略称です。

大都市・東京で子育てをしながら働くご夫婦の、WLBと健康との関係性を明らかにすることで、より良いWLB推進や健康増進のための根拠になれば、との願いを込めてつけられました。

2008年より都内某区の区立・私立保育園にお子様が通う共働きご夫婦を対象に 夫婦それぞれのWLBと健康(自分,配偶者)との関連を検討した大規模研究を「 TWIN study I」と呼んでいます。2010年からは子ども調査が加わり、親(父,母)のWLBと子どもを含めた家族全体の健康との関連を検討する5年間の追跡研究を「TWIN study II」と呼んでいます。

2015年からは、「TWIN Study III」として,ワーク・ライフ・バランス・プログラムを参加者にご提供し,WLBと子どもを含めた家族全体の健康の効果を追跡調査いたします。

TWIN Study I・II・III を通した研究によって、WLBがご自身やご家族の健康に及ぼす長期的な影響が明らかにされ、 仕事と家庭とを両立しながら働く方とそのご家族を支援するための効果的な方策を見つけ出すことが期待されています。

研究計画

TWIN Study III

【研究の社会的背景】
わが国では,第1子の出産後に仕事を辞める女性は半数にのぼります。3歳未満の子どもを育てる母親の就業率は,米国では5割を超えるのに対し,日本は3割に留まっています。出産や育児期にあたる30歳代で,女性の働く割合が大きく下がるのは,主要7ヶ国(G7)の中で日本特有の現象です。その背景には働き盛り男性を中心とする長時間労働,家事・育児負担の女性への偏在など,ワーク・ライフ・バランスがとりづらい現状があります。

ワーク・ライフ・バランスは,伝統的には女性労働者の課題として論じられてきましたが,過重労働や雇用不安に伴うメンタルヘルス問題の増加,労働力人口の減少に伴う多様な労働力の確保,共働き世帯の増加に伴う育児支援の充実などが喫緊の課題となっている近年では,社会全体の問題として論じることの重要性が指摘されています(内閣府, 2014)。

しかし,わが国のワーク・ライフ・バランス対策は,少子化対策,男女共同参画,キャリア開発,育児支援の視点からは推進されているものの,健康支援の視点からの取り組みはいまだ着手されておらず,科学的根拠にもとづいた支援プログラムも存在していない状況にあります。

【研究の学術的背景】
ワーク・ライフ・バランスに関する従来の実証研究では,仕事と生活との間のネガティブな流出効果に注目した研究が大部分です。そこでは,仕事上の負担が生活上の負担を増やす,あるいは,生活上の負担が仕事上の負担を増やし,その結果,労働者にネガティブな影響を及ぼすことを指摘しています。しかしながら,仕事と生活とのポジティブな流出効果(たとえば,仕事の成功が私生活を充実させる,良好な家族関係が仕事へのモティベーションを向上させる)に注目した研究は非常に少ないのが現状です。

一方,ワーク・ライフ・バランスのあり方は,労働者自身の健康に影響を及ぼすだけでなく,パートナーの健康や子どもの健康にも影響を及ぼす可能性がありますが(クロスオーバー効果),これらの関連を検討した大規模な疫学研究は国内外でほとんど行われていませんでした。

このような背景から,研究代表者の島津は,2008年にTWIN studyを立ち上げ,未就学時を持つ共働き夫婦のワーク・ライフ・バランスのあり方が自己とパートナーの健康に及ぼす影響をTWIN study I(若手研究(B)),自己・パートナー・子どもの健康に及ぼす影響をTWIN study II(基盤研究(B))の2つの大規模コホート研究を通じて明らかにしてきました。

本研究課題は,TWIN study IおよびIIで得られた知見をTWIN study IIIとして発展させ,ワーク・ライフ・バランスに注目した健康支援プログラムの効果を大規模な無作為化比較試験によって評価することを目的としています。
 
乳幼児期の親を対象とした育児支援プログラム(Triple Pなど)とその効果評価研究は,これまでに多数存在しています(Fujiwara et al., 2011など)。しかし,乳幼児期の子どもを持つ労働者を対象とし,彼(女)らのワーク・ライフ・バランスに注目しながら,労働者・夫婦・子どもの3者の健康を支援するためのプログラムとその効果評価研究(無作為化比較試験)はこれまでに見当たりません。つまり,労働者のワーク・ライフ・バランスに注目した健康支援技術を科学的に確立することが,国内外を通じて急務の課題となっています。

【TWIN study IIIで明らかにすること】
乳幼児期の子ども(0〜6歳児)を持つ共働き夫婦を対象として,ワーク・ライフ・バランスに注目した健康支援プログラムを新たに開発し,その有効性を大規模な無作為化比較試験によって評価します。TWIN studyチームらの過去の研究成果にもとづき,プログラムは,セルフマネジメント,夫婦マネジメント,親子マネジメント,の3つを組み合わせて構成します。

【学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義】
1. この研究の最大の特色は,乳幼児期の子どもを持つ共働き夫婦のワーク・ライフ・バランスに注目しながら,労働者,パートナー,子どもの健康を改善するきわめて新しいプログラムを開発し,その効果を無作為化比較試験により検証する点にあります。この研究成果は,ワーク・ライフ・バランスに注目した健康支援対策の学術面での進展だけでなく,従業員のパートナーや子どもの健康を維持・増進するための実践的な方策の開発につながることが期待されます。

2. ワーク・ライフ・バランスの向上が,就業者,パートナー,子どもの健康に影響を及ぼす具体的なメカニズムが明らかになることで,精神保健学だけでなく,健康心理学,発達科学,行動医学など関連領域の研究を刺激することが期待されます。

TWIN StudyU

CEO

TWIN StudyTに引き続き行われている5年間の追跡研究です。

 TWIN StudyUの最大の特徴はお子様に関する調査が追加された点です。
お子様が保育園に通う共働き夫婦1,500世帯を対象として、ご自身の仕事・家庭状況、WLBや健康に加え、お子様の発達、生活習
慣、養育態度についてお聞きしています。

これによりご夫婦それぞれのWLBのあり方が
(1)ご自身の健康
(2)配偶者の健康 だけでなく、
(3)夫および妻の養育態度を通じた子どもの健康
に対してどのような影響を及ぼすのかが明らかになります。
つまりTWIN StudyUは、 お父様・お母様のWLBのあり方が、 お子様の発達・生活習慣・養育態度へどのように影響していくか が明らかにできるという最大の特徴があります。

TWIN StudyT

CEO

欧米先進国では共働き家庭の増加に伴い、WLBが働く人の健康にとって大変重要であることが明らかになっています。一方日本ではWLBと健康との関係を健康科学の観点から検討した研究は まだまだ少ないのが現状です。

 そこで私たちは、子育てをしながら働いているご夫婦の仕事と家庭が どのように影響し合い、健康とどのような関連を持っているかを明らかにしようとしています。

 2008−2009年度に行われた調査では 約3000人の方に調査票にお答えいただき、WLBと健康とのつながりには性差があることや、夫・妻のWLBのくずれ
(例:仕事と家庭間でのマイナスの相乗効果)が お互いの健康に影響し合う、などの知見が明らかになりました。産業保健の分野においては、 未就学児を持つ共働き労働者を対象とした世界最大規模の研究として 国内外からも注目されています。

 またこの研究は "仕事と家庭を両立することのメリット(例:プラスの相乗効果)"や、 "自己のWLBや健康が配偶者のWLBや健康に影響を与える効果" にも焦点をあてているのが大きな特徴です。

 今後も仕事と家庭の両立や子育てをしながら仕事をすることのメリットを明らかにし、 仕事と家庭の両立支援策や少子化対策立案において、 健康科学的な見地から根拠となるデータを提供したいと考えています。

バナースペース

北里大学
人間科学教育センター

研究代表者:教授 島津明人
事務局:渡辺真弓
E-mail:wlb-project@umin.ac.jp