研究代表者から

新型コロナウイルス感染症の世界的流行により,私たちの働き方は大きく変化しました。その影響は,ワーク・ライフ・バランス(WLB)にも認められています。たとえば,在宅勤務を行うことで,心身の負担が軽減し,家事・育児時間が増え,生活満足度が向上するなどの肯定的な影響が報告されています。

一方で,在宅勤務は,仕事と私生活との間の物理的な境界だけでなく,時間的な境界もあいまいにします。そのため,長時間労働につながったり,家庭生活と仕事生活との相互干渉をもたらすことなども,報告されています。

しかし,コロナ禍で急速に変化した働き方が,未就学児を持つ共働き世帯のWLBにどのような変化をもたらしているのでしょうか? これらの変化は,精神的健康にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?
これらの疑問を実証的に明らかにした研究は,ほとんど行われていないのが現状です。

そこで,私たちは,コロナ禍で大きく変化した育児期共働き世帯のWLBと精神的健康への影響,およびそのメカニズムを検討することを目的に,新たな研究プロジェクトを立ち上げました。この研究プロジェクトでは,パネル調査,経験サンプリング調査,面接調査という3つの異なる研究手法を組合わせながら,研究課題の解明に臨みます。

このプロジェクトを通じて,WLB理論のさらなる発展だけでなく,臨床心理学,健康心理学,産業保健学,発達科学など関連領域の研究を刺激し,支援プログラムの開発や政策立案など実践への発展に貢献したいと考えています。

慶應義塾大学総合政策学部
教授 島津明人