私たちの研究チームでは,「ワーク・ライフ・バランスと健康」プロジェクト,通称TWIN study(Tokyo Work-life Interface) を2008年に立ち上げ,保育園にお子様をあずけながら仕事に従事している共働き夫婦を対象に,仕事と家庭生活との接点が健康に及ぼす影響を継続的に検討してきました。
これまでに,TWIN Study I,II,III の3つの研究プロジェクトによって,ワーク・ライフ・バランスがご自身やご家族の健康に及ぼす長期的な影響を明らかにしただけでなく,仕事と家庭とを両立しながら働く方とそのご家族を支援するための効果的な方策を提案することができました。
しかし,コロナ禍で急速に変化した働き方が,未就学児を持つ共働き世帯のWLBにどのような変化をもたらしているのか,これらの変化はが精神的健康にどのような影響を及ぼしているのか,といった疑問を実証的に明らかにした研究は,ほとんど行われていませんでした。
そこで,私たちは,TWIN study IVを新たに立ち上げ,コロナ禍で大きく変化した育児期共働き世帯のWLBと精神的健康への影響,およびそのメカニズムを検討することにしました。
本研究では,未就学児を持つ共働き夫婦3,000世帯(予定)を対象に,コロナ禍における夫婦それぞれのWLBのあり方が,自己・配偶者・子どもの精神的健康に及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにすることを目的としています。
大規模パネル調査,経験サンプリング調査,面接調査の3つの手段を組合わせながら,図に示す4つの検討課題を多角的に明らかにし,ウィズ/コロナにおける新しいWLBモデルの提案につなげます(研究手続きの詳細は,「研究概要(参加される方向け)」 をご覧下さい)。
研究計画
TWIN Study III
詳細は「TWIN Study III」サイトをご参照ください。
TWIN StudyⅡ
TWIN StudyⅠに引き続き行われている5年間の追跡研究です。
TWIN StudyⅡの最大の特徴はお子様に関する調査が追加された点です。
お子様が保育園に通う共働き夫婦1,500世帯を対象として、ご自身の仕事・家庭状況、WLBや健康に加え、お子様の発達、生活習
慣、養育態度についてお聞きしています。
これによりご夫婦それぞれのWLBのあり方が
- ご自身の健康
- 配偶者の健康 だけでなく、
- 夫および妻の養育態度を通じた子どもの健康
に対してどのような影響を及ぼすのかが明らかになります。
つまりTWIN StudyⅡは、 お父様・お母様のWLBのあり方が、 お子様の発達・生活習慣・養育態度へどのように影響していくか が明らかにできるという最大の特徴があります。
TWIN StudyⅠ
欧米先進国では共働き家庭の増加に伴い、WLBが働く人の健康にとって大変重要であることが明らかになっています。一方日本ではWLBと健康との関係を健康科学の観点から検討した研究は まだまだ少ないのが現状です。
そこで私たちは、子育てをしながら働いているご夫婦の仕事と家庭が どのように影響し合い、健康とどのような関連を持っているかを明らかにしようとしています。
2008-2009年度に行われた調査では 約3000人の方に調査票にお答えいただき、WLBと健康とのつながりには性差があることや、夫・妻のWLBのくずれ
(例:仕事と家庭間でのマイナスの相乗効果)が お互いの健康に影響し合う、などの知見が明らかになりました。産業保健の分野においては、 未就学児を持つ共働き労働者を対象とした世界最大規模の研究として 国内外からも注目されています。
またこの研究は “仕事と家庭を両立することのメリット(例:プラスの相乗効果)”や、 “自己のWLBや健康が配偶者のWLBや健康に影響を与える効果” にも焦点をあてているのが大きな特徴です。
今後も仕事と家庭の両立や子育てをしながら仕事をすることのメリットを明らかにし、 仕事と家庭の両立支援策や少子化対策立案において、 健康科学的な見地から根拠となるデータを提供したいと考えています。